最近便利な世の中になりました。
雑誌や専門書を読まなくても誰かが知恵をHPに載せてくれています。
だから,家事,家電やPCの問題はたいていHPで解決できます。
しかし,法律相談は違います。
平成時代から,自ら調べた情報を自己の都合のいいように解釈しながら,法律解釈として間違っているのに,法律相談で相手(弁護士)に押し付けようと議論に持ち込む相談者も数多くいます。
自ら信じた情報とは異なる結論が出た裁判を経て,「私の方が正しいのに。裁判官も弁護士もわかってくれない」と,法律相談で初見の弁護士に法律上の議論をぶつけたりするのです。
更に,令和に入ってから今風の相談が増えてきました。
相談者が,自らに生じた法律問題に対応するため,法律相談する前にネットで調べた情報を組み合わせ利用して処理し解決したと信じていたところ,問題が解決していないので,法律相談をするというパターンです。弁護士からすると,解決どころか余計な経済的負担が増えるだけの手段を採用したことが明白なのですが,本人とすればベストコストパフォーマンスと信じて行ったのだと思います。
メールなどでもきちんと個別具体的事例を説明しながら専門家に法律相談をした場合はまだいいのですが,最近は他人の法律相談の解決例を見て参考にして契約書を作り,間違った契約(事件処理)をしてしまうという(当職が弁護士になった平成13年にはなかった)ことが起きているようです。
そういう世の中になったのだなと,過ぎ去った21年の自らの弁護士歴をしみじみ感じながら,少なくともコストパフォーマンスの計算の仕方・実行を間違っている人が増えてきていることにどうすればいいのかと思い,とりあえず当職のホームページにこのページを追加しました。
弁護士費用が惜しいのであれば,結論はともかく安く事件処理をしたいということでしょうからそれでもかまいませんが,結果的に,弁護士に相談していた方がはるかに安価に事件が処理できたのにと思うのです。
めんどくさいや時間がないならなお危険です。
法律について学問があり専門職もある分野なのに,その素人が短時間で法律解釈を理解できるはずもないと思うのは常識ではないでしょうか?素人による専門家の法律解釈や手段を都合よく選択してなされた処理が正確であれば,もはや我々の仕事は専門職ではなくなってしまいます。
証拠や条件を付加すると結論は180度変わることも多い分野でもあります。
つまり法律問題は非常に複雑なことが多いのです。
一見同じ問題に見えても全く同じ事件は一つとしてありません。
それが,AI化が進んでも法曹の仕事はAIで対応できることにならない所以です。
結局,めんどくさくなく安価として信じる手段に頼った結果,処理を誤り高くついたということになっているようなのです。高くついても紛争が解決していればまだましですが,余計にこじらせてしまったらこれまた最悪でしょう。
人は基本的に「自分に都合が良い情報は簡単に信じ,都合が悪い情報は信じない」「不安をあおる情報に対する理性が保てない。」という本能的ともいえる性質があります。
その本能に従うと一番まずいのが,解決手段が客観性と理性の象徴でもある法律問題です。
つまり,証拠や事実の評価判断という専門性のみならず,情報の取捨選択に法律的ないわゆる理性的な判断ができない事件当事者にとってかかる解決方法はそもそも困難だということなのです。
現実に問題が起きた場合だけでなく,詐欺に利用されることもあるでしょう。
例えば昔から形を変えて詐欺(簡単に巨額をだまし取ろう)はなくなりません。
上記,人は基本的に「自分に都合が良い情報は簡単に信じ,都合が悪い情報は信じない」「不安をあおる情報に対する理性が保てない。」という本能があるから,永久につけこみつづけることができるからです。
職業的詐欺師を相手にして(自ら騙されていることに気づかず)ネット情報で対応できると,ここまで説明してもまだ思うのであれば仕方ないとは思いますが,損害を受けてからの回復は難しいことをここで確認しておきます。
事件当事者という理性的に判断することが難しい立場であるが故に信じたい情報で事件処理をしてしまうのではないか。というのがネット情報による自己事件処理の問題点ということです。
つまり,情報はあふれるほど確認しきれないほどたくさんあります。
それの正確性の確認に始まり,法的素養に裏付けられた個別具体的な応用性もあって初めて,HPの情報の利益を享受できるだけなのです。
また詐欺なのか事実なのかなどの確認も必須です。
この程度の話でめんどくさい(難しい)こと言ってるなと思われるなら,HPを利用しての問題解決能力はほぼないというのが,専門家としての意見です。大きく損をしたくないのであれば,今すぐHPでの問題解決をやめて,(法テラスや自治体の市民法律相談などの無料法律相談もありますが,急ぐのであれば)有料でも(当職でなくてもいいので)弁護士会での法律相談の申し込みをお勧めします。